TolosaからToulouseへ

Toulouseはかつて Tolosaと呼ばれていました。

目次

古代における「Tolosa」の起源

トゥールーズ(Toulouse)は古代にはラテン語で 「Tolosa(トローサ)」 と呼ばれました。現存する最古の記録は紀元前2世紀ごろで、ギリシア人地理学者のポセイドニオスやストラボンが 「Τολώσσα(Tolóssa)」 と記し​fr.wikipedia.org、ローマ人もキケロ、カエサル、プリニウスらがラテン語で 「Tolosa」 と言及しています。​fr.wikipedia.org

この地名の語源的起源ははっきりせず、ケルト語(ガリア語)由来とは考えにくい名称です​。forumeribatouring.com

多くの言語学者は トゥールーズの名称は先インド・ヨーロッパ的(ラテン支配以前)のもので、おそらくイベリア語(古代イベリア半島の言語)やアキテーヌ語に由来すると考えています​。fr.wikipedia.org

実際、イベリア半島や南仏に「Tolosa」「Tolox」といった地名が複数存在し、トゥールーズ以前にこの地に住んでいた人々が話したとされるアキテーヌ語(バスク語の祖語にあたる言語)との関連が指摘されています​。lejournaltoulousain.fr

一説には「Tol-」という語根が水や湿地に関係するとされ、ガロンヌ川に面した土地の特徴を表す可能性も取り沙汰されていますが、決定的な証拠はありません​

lejournaltoulousain.fr lefigaro.fr

要するに、「Tolosa」という名はケルト系の住民(ガリア人)であるテクトサゲス族(Volques Tectosages)がこの地に入る前から使われていた土着の地名であり、ローマ人はそれを音写したに過ぎないと考えられています​。persee.fr

ローマ支配から中世までの継承

ローマ時代を通じて都市名はTolosaのまま維持されました。ガリア人テクトサゲス族の都市国家(トロサテス族)として発展し、ローマ属州ナルボンヌの一都市「Tolosa」として繁栄しました​。en.wikipedia.org

後に西ゴート王国の首都(419–507年)にもなりましたが​、britannica.com

その後フランク王国のクローヴィス1世によって征服され、メロヴィング朝、カロリング朝の支配下でも地名はラテン語系の表記で存続しました。中世を通じ、オック語(Occitan)がこの地方の言語として発展すると、都市名もオック語で 「Tolosa」(発音は[トゥローゾ]に近い)と呼ばれるようになります​forumeribatouring.com

実際、現代でもオック語におけるトゥールーズの名称はTolosaであり、市のモットー(標語)にも「Per Tolosa totjorn mai(トロザのために常にさらに)」とラテン語由来の形が残っています​forumeribatouring.com

このように古代から中世にかけて、トゥールーズの名前そのものは大きく変わることなく受け継がれました(パリが「ルテティア」から改名されたような劇的な改称は起こっていません)​。lejournaltoulousain.fr

フランス王権下での名称表記の変化

中世後期、アルビジョワ十字軍(13世紀)を経てトゥールーズ伯の領土がフランス王権に併合されると(1271年にトゥールーズ伯爵家断絶により王領編入)、公用語としてのオック語からフランス語への転換が徐々に進みました​。forumeribatouring.com

1539年のヴィレル=コトレ勅令により行政・司法文書はフランス語で作成されることが義務づけられたため、トゥールーズの名前もフランス語で綴られるようになります。この過程で、フランス語における表記ゆれが生じ、歴史資料には様々な綴りが見られました。例えば、古地図や公文書には 「Tolose」, 「Tholose」, 「Tholoze」, 「Tolouse」 といった綴りが残されており、時代や筆者によって表記が一定しなかったことがわかります​。archives.toulouse.fr

中世フランス語では語源を意識してか**「Tholose」**(頭にHを加えた綴り)が用いられることが多く、この綴りはルネサンス期から17世紀頃まで公式文書や地図で用いられました​。forumeribatouring.com

lejournaltoulousain.fr

当時、一部の学者は都市の創建者をトロイアの英雄「トロス(Tholus)」だとする伝説を唱えるなど語源について誤解もあり、こうした俗説も綴りに影響を与えた可能性があります​。lefigaro.fr

(実際には「tholus」は古代ローマの建築用語を刻んだ石の誤読であることが後に判明しています​)。

lefigaro.fr

「Toulouse」現在の形への定着

現在の綴り “Toulouse”(トゥールーズ) は、17世紀末頃からフランス語文書で一般化し始め、最終的に18~19世紀に定着しました。これはフランス語の音韻変化および現地オック語発音の影響によるものと考えられています。オック語では Tolosa を[トゥルーゾ]のように発音しており、フランス語話者もそれに近い形で発音・表記するようになった結果、「Tolose(トローズ)」の “o” がフランス語では “ou” と二重音字化されて Toulouse へと変化したと考えられます​。forumeribatouring.com

実際、17世紀末までにフランス語表記は Tholose から Toulouse へと「転化」したとされ​、forumeribatouring.com

18世紀の古地図に見られる Tholose という綴りも19世紀には姿を消しました​。lejournaltoulousain.fr

19世紀にはついに現在のつづり「Toulouse」が公式に用いられるようになり、過去の綴り揺れは収束します​。lejournaltoulousain.fr

このように、一人の権力者が改名を宣言したのではなく、言語の変化と政治的統合の流れの中で徐々に現在の形へと移行したのがトゥールーズという地名の歴史なのです​。forumeribatouring.com lejournaltoulousain.fr

参考文献・出典情報

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次